「森澤家大十三結社之秘傳」-2 (現代語要約)
保田で教員職を勤め上げた森澤は、その後単身ドイツに渡り、石原の知己を頼ってドライセン・グロッセの秘術を学んだ。この時森澤が接触した人物や、連絡手段、場所などについては、一切記されていない。関係者の情報をどこかに記録することは、固く禁じられたようだ。昭和13年、国家総動員法が公布され、経済の構造が大きく変わろうとしていた。職業は自由に選ぶことができない。その上そう遠くない未来に徴兵制度が拡大され、国土が戦場となれば生存の余地は絶望的となるだろう。日本が国内で言われているほど強い国ではないことを、森澤は承知していた。そして兼ねて準備を進めていた「不滅の秘術」を決行する。
不滅の秘術──「大十三結社」には、13人のメンバーが必要となる。森澤は自身の子供たちと末の弟、その配偶者たちでそれを構成し、自宅の敷地内に防空壕を装った「巣」を作った。この「巣」は、強力で特殊なエネルギーの影響下になければならなかった。森澤家の屋敷は、陰陽道に基づいた龍穴の上に建てられていた。龍穴の上に住む一族は繁栄する、という中国の伝承を知っていた森澤は、これが「不滅の秘術」を可能にするエネルギーであると直感していた。
ただ、森澤はこの秘術を、完全に信用していたわけではなかった。万が一失敗に終わった場合、13人もの血族を一度に失うことになる。そこで、失敗した場合にも子孫を残せるよう、家督を継ぐ長男夫婦をメンバーから除外し、余生の短い自分たち夫婦とともに、屋敷守りとして残した。全員を説得するのには手間がかかったが、なんとか合意に至る。
彼らの秘術は成功した。自ら毒を飲み、棺に収まった彼らは、龍穴のエネルギーが生み出した新たな肉体を得て復活した。2年後の昭和15年、森澤榮徳は心不全により死去。第17代当主となった長男・博己は、一族全員に心得を厳しく言い渡した。
